「ルックスマクシング」「モッグド」… misogynistフォーラムの言葉がSNSに蔓延する現実

最近、ソーシャルメディアのフィードで、これまで特定のオンラインフォーラムでしか見られなかったような、極めてニッチで、しばしば有害なニュアンスを持つ言葉が、驚くほど頻繁に目につくようになりました。中でも「looksmaxxing(ルックスマクシング)」や「mogged(モッグド)」といった言葉は、その代表格と言えるでしょう。これらの用語は、元々、女性嫌悪的な(misogynist)オンラインコミュニティ、特に「incel(インセル:involuntary celibate、非自発的独身者)」と呼ばれるグループ内で使用されていたものが、Tik TokやX(旧Twitter)といった大手プラットフォームへと拡散しています。

**言葉の拡散:incel文化のSNSへの侵食**

incelコミュニティは、しばしば、恋愛や社会における自身の不遇を女性や社会構造のせいにし、過激な思想や憎悪を共有する場として知られています。彼らの間で使われるスラングは、しばしば男性の容姿や社会的地位に異常に固執し、他者を貶める目的で用いられます。「looksmaxxing」とは、文字通り「ルックスを最大限に良くする」という意味で、整形手術、スキンケア、トレーニング、さらにはファッションに至るまで、外見を改善するためのあらゆる努力を指します。しかし、incelコミュニティにおいては、これは単なる自己改善を超え、女性から「選ばれる」ための、しばしば過激で非現実的な手段を追求する文脈で語られます。

一方、「mogged」は、誰か(通常は男性)が、別の男性よりも容姿や社会的地位、あるいは魅力において著しく劣っている、あるいは「負かされた」状態を指す言葉です。これは、incelコミュニティが自己の劣等感を慰めるために、他者を一方的に見下し、優位性を確立しようとする心理の表れと言えます。

これらの言葉が、incelフォーラムのような閉鎖的な空間から、Tik Tokの短い動画やXのポストといった、よりオープンで広範なプラットフォームへと移行した背景には、いくつかの要因が考えられます。第一に、ソーシャルメディアプラットフォームのアルゴリズムが、エンゲージメント(いいね、コメント、シェアなど)の高いコンテンツを優先的に拡散する性質を持つことです。扇情的であったり、議論を呼ぶような言葉やコンテンツは、たとえそれが有害なものであっても、アルゴリズムによって拡散されやすい傾向があります。incelコミュニティで使われるような過激な言葉は、しばしば強い感情を呼び起こし、結果として高いエンゲージメントを生み出す可能性があります。

第二に、これらのプラットフォーム上での「コミュニティ形成」のメカニズムです。Tik Tokなどでは、特定のハッシュタグやトレンドを通じて、共通の興味や価値観を持つユーザーが集まりやすい構造があります。incel的な思想を持つユーザーが、これらの言葉を使い始めることで、同じような考えを持つ他のユーザーを引き寄せ、言葉が「ミーム」として拡散していく現象が起きています。

**技術的背景とプラットフォームの責任**

プラットフォーム側は、こうした有害なコンテンツや言葉の拡散に対して、しばしば「表現の自由」とのバランスを取りながら、コンテンツモデレーション(内容審査)を行っています。しかし、AIによる自動検出だけでは、スラングや隠語、文脈によって意味合いが変化する言葉を正確に捉えることは困難です。例えば、「looksmaxxing」という言葉自体は、文脈によっては単なる自己啓発やフィットネスに関する話題として使われることもあります。しかし、incelコミュニティの文脈で使われる場合は、より深刻な問題を含んでいます。プラットフォームが、こうした言葉の「文脈」を正確に理解し、有害な使用を規制するためには、より高度なAI技術と、人間のモデレーターによるきめ細やかな判断が不可欠です。

また、これらの言葉が広まることで、本来incel文化とは無関係であった若者たちが、無邪気に、あるいはトレンドとしてこれらの言葉を使い始めるリスクも指摘されています。これは、言葉の本来持つ有害なニュアンスや、それが生まれた背景にある misogynist な思想から切り離されて、表面的な流行として消費されてしまう危険性を示唆しています。

**社会への影響と今後の展望**

「looksmaxxing」や「mogged」といった言葉の拡散は、単なる言葉遊びの問題に留まりません。これは、オンライン空間における misogynist な思想の浸透、特に若い世代への影響という、より深刻な社会問題の兆候である可能性があります。外見至上主義の助長、他者への過度な競争意識や劣等感の植え付け、さらには女性やマイノリティに対する偏見の温床となりかねません。

ソーシャルメディア企業は、こうした言葉の拡散に対して、より積極的かつ効果的な対策を講じる必要があります。アルゴリズムの透明性の向上、有害コンテンツ検出能力の強化、そしてユーザー教育の推進などが求められます。同時に、私たちユーザー一人ひとりも、目にする言葉の背景や意味を理解しようと努め、無批判に拡散するのではなく、健全なコミュニケーションを心がけることが重要です。

incel文化やそれに付随する言葉が、今後どのようにソーシャルメディア上で変化し、あるいは規制されていくのか。そして、それが私たちの社会における外見、ジェンダー、そして相互理解にどのような影響を与えていくのか。この問題は、今後も注視していく必要があるでしょう。


引用元:
https://www.wired.com/story/everyone-speaks-incel-now/

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